平均勤続年数、グリー:1.1年、DeNA:2.5年、楽天:3.3年の理由

企業の概況を表す項目の一つに「平均勤続年数」があります。この平均勤続年数を見ると、IT系のベンチャー企業は軒並み低いことがわかります。

見出しにいくつか例を挙げましたが、「グリー:1.1年」、「DeNA:2.5年」、「楽天:3.3年」と非常に短い数値となっています。

老舗の大手企業は軒並み十年以上となっていますが、この違いはなんでしょうか?

平均勤続年数とは

まず、平均勤続年数の定義と調べ方について確認しておきましょう。

平均勤続年数とは、現在の社員の勤続年数の平均を表したものです。上場企業(一部の非上場企業を含む)であれば、有価証券報告書で調べることが出来ます。有価証券報告書はネット上から無料で誰でも閲覧可能です。

有価証券報告書の見方については以下のページを参考にしてください。

職種・業界別、企業別の平均年収(給料)を調べる方法

IT系ベンチャー企業の平均勤続年数

見出しで挙げた、グリー、DeNA、楽天に限らずIT系のベンチャー企業は軒並み平均勤続年数が短い傾向にあります。これだけ見ると、IT系ベンチャー企業は離職率が高いように感じますが、必ずしもそうとは限りません。

平均勤続年数というのは、退職した社員の勤続年数(辞めるまでの年数)の平均ではないため、例えば、平均勤続年数が3年の会社の場合は社員が平均して3年で辞めているというわけではありません。

もちろん、離職率の高さが影響して平均勤続年数が短くなることも考えられますが、平均勤続年数の数値だけ見ていてもあまり意味がないでしょう。平均勤続年数を見る場合には、必ず「会社設立からの年数」と「従業員数の推移」の2つを合わせてみる必要があります。

会社設立からの年数

会社設立からの年数が短い企業は当然、平均勤続年数も短くなります。

例えば、設立から10年しか経っていない企業の場合は、最も古参である創業メンバーでも勤続年数は10年なので、平均勤続年数は確実に10年よりも短くなります。

設立からの年数が大きく異なる企業の平均勤続年数を比べる場合は、このことを頭に入れておかなければいけません。

従業員数の推移

従業員数の推移も平均勤続年数に大きな影響を与えます。

毎年同じくらいの数の新入社員を採用している企業の場合は影響は少ないのですが、年を追うごとに採用する新入社員の数が急速に増えている企業の場合は平均勤続年数は短くなります。

極端な右肩上がりの企業の場合、勤続年数の長い古参の社員の割合が少なく、勤続年数の短い新しい社員の割合が多くなるので、その平均値が短くなるのは当然ですね。

グリー株式会社の場合

ここで、平均勤続年数が極端に短いグリー株式会社のケースを見てみましょう。

有価証券報告書によると、ここ5年のグリーの社員数の推移は以下のようになっています。

平成22年6月 174人、平成23年6月 513人ということを考えると、(513-174=339人)は少なくと平均勤続年数が1年未満ということになります。

また、平成21年6月 102人であることを考えると、(513-102= 401人)は少なくとも平均勤続年数が2年未満であることがわかります。

つまり「社員の66%以上が1年未満」、「社員の80%以上が2年未満」という状況です。

また、グリーの設立は2004年12月ですので、最も勤続年数が長い社員でも7、8年です。

離職率の高さはわかりませんが、事業の拡大にともなって、社員の数を急速に増やしたことが平均勤続年数の短くなっている要因の一つであることは間違いなさそうです。

まとめ

  • 平均勤続年数は社員が辞めるまでの年数の平均ではない
  • 「平均勤続年数が短い」=「離職率が高い」=「ブラック企業」とは限らない
  • 「会社の設立年数」や「従業員数の推移」といったデータと合わせて考える


サブコンテンツ